金利と原油が主導した一週間——日米株安、金と資源が相対優位

金利と原油が主導した一週間——日米株安、金と資源が相対優位

2026年8月17〜21日週。日米株は金利上昇と中東リスクで下落し、海運・資源・ヘルスケアが相対優位。原油・金は上昇、ドル円は158〜160円で越週。

対象期間: 2026 年 8 月 17 日(月)〜8 月 21 日(金)の取引週 データ基準: 各市場の週末終値(日本は 8 月 21 日大引け、米国は同日のニューヨーク終値) 注意: 本記事は情報の整理と解説のみを目的とし、特定銘柄の売買推奨や目標株価の提示は行いません。
今週の市場が織り込もうとしていたのは、次の一本の線です。中東情勢の膠着で原油が再び上値を試し、長期金利の上昇が成長株の割引率を押し上げる一方、資源・インフラ・ヘルスケアへ資金が移る——という価格付けです。株式は日米とも週次で下げ、金と原油は上げました。

主要指数の週間パフォーマンス

指数・指標週末終値週間騰落主な背景
日経平均株価66,016.36 円−3.93%(−2,697.44 円)金利上昇と AI ・半導体株の反落 1
TOPIX4,067.29−3.1%(−129.91)同上、大型成長株の重しが相対的に大きかった 1
S&P 5007,674.37−1.43%長期金利の振れと IT の軟調 2
ナスダック総合26,180.46−2.05%ハイテク中心の押し目、3 週連騰が途切れた 2
NY ダウ53,277.01−0.85%2 週連続の週間安 2
ドル/円158.97〜158.98 円付近前週末比ほぼ横ばい〜小幅円高日米金利差と介入警戒が交錯 3
WTI 原油先物87.06 ドル/バレル前後週間+5.66%米・イラン対立と供給懸念 24
ブレント原油94 ドル台週間+6.39%同上、1 カ月ぶりの高値圏 2
金(スポット/先物)4,500 ドル台後半週間おおよそ+4.7〜5%ドル軟化と米国債への警戒 5
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日本株:週前半の AI 高から、金利と地政学で急反転

日経平均は 8 月 21 日終値66,016.36 円。前週末(8 月 14 日終値 68,713.80 円)比で2,697.44 円安(−3.93%)でした。67 TOPIX は4,067.29で週間−3.1%でした。18
週の流れははっきりしています。
  • 17 日(月): AI ・半導体関連が買われ、日経平均は 69,220.25 円まで戻した。67
  • 18〜19 日: 中東リスクの再燃と日米長期金利の上昇で急落。19 日は日経平均が 2,000 円超安となる場面もあった。1
  • 20〜21 日: 米長期金利の一時低下や押し目買いで下げ渋り。週末は小幅な値動きで越週した。9

上昇を主導したセクター・銘柄

物色の軸は海運・非鉄・電力に寄りました。読売 333 の集計では、日経平均ベースの週間上昇率上位に次が並びました。1
順位銘柄週間騰落率読まれた材料
1商船三井(9104)+12.47%地政学リスクによる海上運賃上昇期待
2川崎汽船(9107)+12.38%同上
3住友金属鉱山(5713)+12.26%金価格上昇を背景にした資源物色
4日本郵船(9101)+10.95%海運セクター全体の買い
5関西電力(9503)+8.70%企業向け電気料金引き上げ方針などの報道
SBI 証券も、8 月 14〜21 日の日経平均採用銘柄で商船三井が上昇率トップ、海運・非鉄・電力が上位に並んだと整理しています。金利上昇局面で、高 PER の成長期待株から相対的にバリュエーションの低い資源・インフラへ資金が移った、という読みです。6

下落を主導したセクター・銘柄

売りの中心は電子部品・半導体製造装置など AI 関連でした。1
順位銘柄週間騰落率読まれた材料
1荏原製作所(6361)−16.02%通期利益見通し据え置きへの失望など
2太陽誘電(6976)−15.57%AI 関連全般の売り
3村田製作所(6981)−13.89%電子部品セクターの調整
4SUMCO(3436)−13.67%半導体材料への売り
5横河電機(6841)−12.11%成長株全般の割引率上昇
前の週に大きく上げた日経平均が、その反動も含めて大きく下げた形です。読売 333 は、直近 2 週間を均すと水準自体は大きく変わっていない、と指摘しています。1
なお企業業績そのものは、4〜6 月期決算を経て予想 EPS の回復が確認される局面でもありました。SBI 証券は、日経平均の予想 EPS が 7 月 29 日の 3,516 円から 8 月 17 日には 3,919 円まで戻したと整理しています。6 今週の株価下落は「業績そのものの崩壊」より、金利と地政学が割引率とリスクプレミアムを動かした色が濃い、と読めます。

米国株:金利の上下と、IT からディフェンシブへのローテーション

主要 3 指数はいずれも週間で下落し、S&P 500 とナスダックは3 週連続の上昇が止まりました。週末終値と週間騰落は次のとおりです。210
指数8/21 終値週間騰落率
S&P 5007,674.37−1.43%
ナスダック総合26,180.46−2.05%
NY ダウ53,277.01−0.85%
21 日(金)単日では 3 指数とも上昇しました。S&P 500 は+0.43%、ナスダックは+0.43〜0.44%、ダウは+517.80 ドル(+0.98%)です。週次のマイナスは、週中の金利急騰とテック売りが残した傷です。2

業種別の明暗(S&P 500、おおむね 5 営業日)

SBI 証券が Bloomberg データをもとにまとめた業種指数(5 日)では、順位は次のように分かれました。11
相対的に強かった業種
業種5 日騰落率
ヘルスケア+4.3%
エネルギー+2.5%
素材+2.3%
相対的に弱かった業種
業種5 日騰落率
公益事業−3.6%
資本財・サービス−3.4%
情報技術−3.2%
S&P 500 全体−1.4%
CNBC も、情報技術が 5 日間で 3%超安となり、公益と資本財が指数の週次押し下げ要因になったと伝えています。10

相場を動かした材料

  1. 米長期金利の急騰と、財務省の買い戻し拡充 18 日前後、米 30 年債利回りは一時5.3%台と約 19 年ぶりの水準を付けました。1112 19 日、米財務省は期間 10〜30 年の国債買い戻しについて、1 回あたり上限を少なくとも 2 倍超(40 億ドル)に増やす方針を示しました。金利は一時低下したものの、効果は長続きせず、週末の 10 年債利回りは4.73〜4.74%付近、30 年は5.27%前後で推移しました。2912
  2. 小売決算と個人消費への警戒 ウォルマートの既存店売上の伸び鈍化が、個人消費の先行き不安を増幅しました。SBI 証券は S&P100 ベースでウォルマートの 5 日騰落を約−10%と集計しています。1011
  3. ヘルスケアの個別材料 モデルナとメルクのがんワクチン(mRNA)後期試験で、メラノーマの再発・転移リスク低減が示されたとの発表が、ヘルスケア業種を押し上げました。CNBC はヘルスケア指数が週次で 4%超高となり、6 月下旬以来の強い週になったと報じています。1011
  4. 中東と原油 トランプ米大統領がイランとの協議予定はないとの姿勢を示し、追加の経済圧力も示唆したことで、原油は週間で上昇しました(詳細は後述)。インフレ再燃懸念が長期金利と株式の両方に波及しました。12

為替:ドル円は 159 円を挟んで一進一退

ドル円は、週間を通じて158〜160 円のレンジ内で上下しました。三井住友銀行の集計では、8 月 14〜21 日の実績レンジは158.03〜159.78 円です。13 明治安田アセットマネジメントは、8 月 21 日時点のドル円を158.97 円、前週末比−0.08 円(小幅な円高)と整理しています。3 JTG 証券はドル円の週末終値を158.98 円としています。9
週内の値動きの骨格は次のとおりです。313
  1. 週初: 中東不透明感と原油高・米金利上昇でドル買いが優勢になり、159 円後半まで上昇。
  2. 19 日前後: 米財務省の長期債買い戻し拡充で米長期金利が低下し、ドル円は一時 158 円ちょうど近辺まで下落。
  3. 週末にかけて: 買い戻し効果への疑念と中東リスクの再意識でドルが買い戻され、159 円近辺へ戻した。
ユーロ円は相対的に堅調で、明治安田 AM は 8 月 21 日を185.56 円(前週末比+1.37 円)、JTG 証券は週末終値185.64 円としています。39 Reuters は、ドル指数が週間で約 0.9%安、ユーロが対ドルで週間約 1.0%高だったと伝えています。12
円の側では、日銀の早期利上げ観測や、160 円接近時の介入警戒が上値を抑える材料として意識されました。313

商品:原油は供給懸念、金は「債務とドル」への保険

原油

WTI は 21 日終値で1 バレル=87.06 ドル前後(CNBC)、Reuters は週間でWTI+5.66%、ブレント+6.39%と伝えています。ブレントは一時 1 カ月ぶりの高値圏(90 ドル台半ば)を付けました。2412
背景は、米・イラン対立の長期化観測と、ホルムズ海峡周辺の供給停滞懸念です。トランプ政権がイランやその交易相手への強い経済措置を示唆したことで、外交決着への期待が後退した、と複数の通信社・証券レポートが整理しています。912
原油高は、株式市場ではエネルギー株の相対的な堅調につながり、同時に「インフレ再燃→長期金利上昇」の経路で成長株の重しにもなりました。

金は週間でおおよそ4.7〜5%高。CNBC は先物が 3 カ月ぶりの高値圏に向かったと報じ、JTG 証券は金先物の週末終値を4,680.60 ドルとしています。59
押し上げ要因として挙げられたのは、(1) ドルの週間安、(2) 米財務省の買い戻し拡充が映し出した長期債市場の緊張、(3) 米国の政府債務が40 兆ドルを超えたとの報道に伴う財政懸念です。512 長期金利が上昇する局面でも金が買われた点は、「利回りだけでは説明しきれない、通貨・債務へのヘッジ需要」が同居していたことを示します。

市場はこの一週間、何を織り込もうとしていたのか

材料を一本の価格付けにまとめると、次のようになります。
  1. 地政学プレミアムの再計上 中東の膠着は、原油を通じてインフレ期待と海運・資源株を同時に動かしました。株式全体のリスクオンは後退し、テーマは「AI の成長期待」から「供給と有事」へ移りました。
  2. 長期金利の天井探り 30 年債が 5.3%台を付けたあと、財務省が買い戻しを拡充しても押し下げは一日程度で剥落しました。市場は「当局の流動性支援」を織り込みつつも、財政・発行圧力と AI 関連の資金需要が金利の下値を支える構図をなお疑っています。1112
  3. 成長株から実物・ディフェンシブへのローテーション 日本では海運・非鉄・電力、米国ではヘルスケア・エネルギー・素材が相対的に強く、情報技術と一部の高バリュエーション株が弱い——という配置が一貫していました。割引率の上昇と、業績イベント(モデルナ/メルク)が重なった結果です。
  4. ドル資産への信任とヘッジの同居 ドル指数は週間で軟化し、金と(市場全体では)一部の代替資産が買われました。ドル円自体は介入警戒もあって一方通行にはならず、「ドル安圧力」と「円の上値の重さ」が打ち消し合う形で 158〜160 円に収まりました。
翌週以降、市場が次に織り込みにいく材料として、通信社・証券各社が共通して挙げているのは、エヌビディア決算ジャクソンホール会合での FRB 議長講演、そして米 7 月 PCE(個人消費支出物価指数)です。211 今週の価格付け——金利の天井、原油の地政学プレミアム、AI 関連の感応度——が、これらのイベントで維持されるか、修正されるかが次の焦点になります。

本チャンネルは市場動向の整理と解説を目的としています。投資判断はご自身の責任で行ってください。特定の金融商品の購入・売却を勧誘するものではありません。

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